
04 ビル・ゲイツが見た未来:『ビル・ゲイツ 未来を語る』とインターネットの衝撃
インターネット黎明期の熱狂を伝える上で、一冊の本を紹介したい。それが、1995年に出版された『ビル・ゲイツ 未来を語る(The Road Ahead)』(1995年11月24日初版発行)の改訂版(1996年11月20日発行)である。当時、マイクロソフトのCEOであったビル・ゲイツ氏が、情報技術の未来について語った本書は、世界的なベストセラーとなった。この本でビル・ゲイツはマルチメディアや、CD-ROMについて多くを語っている。この改訂版では、当時、世間で言われていた「情報ハイウェイ構想」がブームだったためかインターネットの章が追加されていた。
「情報スーパーハイウェイ」:夢の構想
1990年代初頭、「情報スーパーハイウェイ」という言葉が盛んに使われていた。これは、高速・大容量の通信ネットワークによって、あらゆる情報が自由にやり取りされる未来社会の構想だ。この構想は、当時のインターネットの可能性を象徴するものとして、多くの人々の期待を集めた。
- 双方向のコミュニケーション: テレビ番組を見ながら、視聴者が意見を送信したり、番組内容に影響を与えたりできる。
- オンデマンドサービス: 映画や音楽を、いつでも好きな時に視聴できる。
- 電子商取引: 自宅にいながら、世界中の商品を自由に購入できる。
- 遠隔教育・遠隔医療: 地理的な制約を超えて、質の高い教育や医療を受けられる。
これらは、現代の私たちにとっては当たり前の光景だ。しかし、当時のインターネット環境を考えれば、まさに「夢物語」だった。
ビル・ゲイツが描いた未来図:先見の明
『ビル・ゲイツ 未来を語る』の中で、ビル・ゲイツは「情報スーパーハイウェイ」がもたらす未来について、具体的なビジョンを提示していた。
- 「ウォレットPC」: 誰もが小型の携帯端末を持ち歩き、情報にアクセスしたり、決済を行ったりする。
- 「デジタル文書」: 紙の文書が電子化され、検索や編集が容易になる。
- 「オンライン会議」: 地理的に離れた場所にいる人々と、リアルタイムでコミュニケーションできる。
これらのビジョンは、スマートフォン、タブレット、クラウドサービス、ビデオ会議システムなど、現在のテクノロジーによって実現されている。
1995年、インターネットは夜明け前
ビル・ゲイツが本書を執筆していた当時、インターネットはまだ黎明期にあった。Windows 95が発売され、Internet Explorerが標準搭載されたことで、ようやく一般家庭にもインターネットが普及し始めた頃だ。
- 低速なダイヤルアップ接続 が主流で、画像や動画の送受信には長い時間がかかった。
- ウェブサイトの数も限られており、検索エンジンの精度も低かった。
- インターネットは一部の先進的なユーザーのもの であり、多くの人々にとっては未知の世界だった。
夢は現実に:ビル・ゲイツの予言、その実現
『ビル・ゲイツ 未来を語る』で描かれた未来は、当時の人々にとっては夢物語のように思えたかもしれない。しかし、それから四半世紀以上経った今、彼の予言の多くは現実のものとなっている。
ビル・ゲイツの先見性は、インターネットが持つ可能性をいち早く見抜き、その未来像を具体的に示した点にある。彼のビジョンは、その後のインターネットの発展を方向付ける、一つの指針となったと言えるだろう。
そして今、生成AIという新たな技術革新が、私たちの前に広がっている。ビル・ゲイツが見た未来の、その先へ。私たちはこれから、どんな世界を創造していくのだろうか?
次回は、インターネットが爆発的に普及する、その契機となった「Windows 95」の登場とその影響について解説します。