
06 ブラウザ戦争:Netscape vs Internet Explorer、インターネットの覇権争い
インターネットが一般に普及する上で、ブラウザの存在は欠かせないものでした。ブラウザとは、インターネット上に存在するウェブサイトを閲覧するためのソフトウェアです。世界中をつなぐ巨大なネットワークであるインターネットは、例えるなら、あらゆる情報が収められた巨大な図書館です。そして、ブラウザはその図書館の中の本(ウェブサイト)を探し出し、読みやすく表示してくれる、虫眼鏡やしおりのような役割を果たしています。つまり、ブラウザが無ければ、私たちはインターネット上の情報にアクセスすることができないのです。
Windows 95によってインターネットへの扉が開かれた後、次に注目されたのは「どのブラウザを使うか」でした。このブラウザ市場をめぐって、Netscape Navigator(ネットスケープ・ナビゲーター)と Internet Explorer(インターネット・エクスプローラー)が激しいシェア争いを繰り広げます。この争いは、インターネットの歴史において「ブラウザ戦争」と呼ばれ、その後のウェブの発展に大きな影響を与えました。
Netscape Navigator:ブラウザ市場の先駆者
ブラウザ戦争の初期、圧倒的なシェアを誇っていたのがNetscape Navigator(以下、Netscape)です。Netscapeは、ウェブの標準化団体であるW3Cの設立にも関わったマーク・アンドリーセンらによって開発され、1994年にリリースされました。
- 革新的な機能: 画像の段階的な表示、JavaScriptのサポートなど、当時としては先進的な機能を備えていました。
- 使いやすいインターフェース: 直感的でわかりやすい操作性で、多くのユーザーに支持されました。
- 高いシェア: 最盛期には、90%近いシェアを獲得していたと言われています。
Internet Explorer:Windowsとの連携でシェアを拡大
一方、MicrosoftはWindows 95にInternet Explorer(以下、IE)を標準搭載することで、Netscapeに対抗しました。
- Windowsとのバンドル戦略: Windows 95の普及とともに、IEの利用者数も増加しました。
- 無料提供: 当初、Netscapeは有料でしたが、IEは無料で提供されました。
- 積極的な開発: MicrosoftはIEの開発に多額の資金を投入し、機能面でもNetscapeを追撃しました。
ブラウザ戦争の激化:独占禁止法訴訟へ
Windowsの圧倒的なシェアを背景に、IEは急速にシェアを拡大しました。この状況に対し、NetscapeはMicrosoftを独占禁止法違反で提訴します。
- 「抱き合わせ販売」の是非: WindowsにIEを標準搭載することは、不当な抱き合わせ販売にあたると主張しました。
- 公正な競争の阻害: MicrosoftがOS市場の支配的地位を利用して、ブラウザ市場でも独占を図っていると批判しました。
この訴訟は、インターネット業界全体を巻き込む大きな問題となりました。
ブラウザ戦争の結末:IEの勝利、そしてウェブ標準の時代へ
裁判の結果、Microsoftは独占禁止法違反と認定されました。しかし、その頃にはIEのシェアはすでにNetscapeを上回っていました。NetscapeはAOLに買収された後、開発を終了しました。
- IEの優位確立: ブラウザ戦争は、事実上IEの勝利で幕を閉じました。
- ウェブ標準への意識向上: ブラウザ戦争をきっかけに、特定のブラウザに依存しないウェブサイト制作の重要性が認識されるようになりました。
- 新たなブラウザの台頭: 近年では、Mozilla Firefox、Google Chrome、Safariなど、IE以外のブラウザもシェアを伸ばしています。
ブラウザ戦争は、インターネットの普及期における重要な出来事でした。この競争を通じて、ブラウザの機能は向上し、ウェブサイトの表現力も豊かになりました。そして、特定のブラウザに依存しない「ウェブ標準」の重要性が認識されるようになったのです。
次回は、インターネットの商用利用を飛躍的に成長させた、eコマースの黎明期について解説します。