
15 [2024年9月]AIを使わない人、使えない人 〜 プロンプトの壁の正体
前回は、プロンプトエンジニアリングの重要性に気づき、AIとの対話が新たなステージに進んだことについてお話しました。特に「ステップバイステップで」というフレーズは、AIに順序立てて考えさせる上で、非常に効果的でした。適切なプロンプトによって、AIの能力を最大限に引き出すことができることを、私は身をもって体験しました。しかし、世の中を見渡してみると、未だにAIを活用できていない、あるいは活用しようとしない人々がいることも事実です。今回は、AIを使わない人、使えない人について、私なりの考察を述べたいと思います。
AI活用を阻む、見えない壁
AIの活用が進む中で、私は、AIを使いこなせている人と、そうでない人の間に、ある種の「壁」が存在することに気づきました。そして、その壁の正体を探るうちに、ある仮説にたどり着きました。
それは、AIを使いこなせない人の多くは、そもそも「人に質問したり、指示したりすることが苦手」なのではないか、ということです。
指示が苦手な人、質問が苦手な人
考えてみれば、AIに適切な指示を出すためには、自分の考えを明確に言語化し、それをAIが理解できる形で表現する必要があります。これは、人に何かを依頼したり、質問したりするのと、本質的には同じです。
しかし、現実の世界では、人に質問したり、指示したりすることを苦手としている人が、少なくありません。 例えば、会議で発言できなかったり、上司に的確な指示を仰げなかったり、といった場面を、皆さんも一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。
プロンプトは「人間力」の反映?
人に質問したり、指示したりすることが苦手な人は、自分の考えをうまく言語化できなかったり、相手に理解してもらえるように説明できなかったりする傾向があります。そして、これは、AIに対するプロンプトを作成する際にも、同じように当てはまります。
つまり、AIを使いこなすために必要な「プロンプト力」は、実は、現実世界における「人間力」、特にコミュニケーション能力と密接に関連しているのではないか、と私は考えました。
言語化・アウトプット軽視の風潮
さらに周囲を見渡してみると、多くの人が、言語化やアウトプットの訓練を、十分に行ってきていないことに気づきました。
学校教育においても、社会人教育においても、インプット中心の学習が多く、自分の考えを言語化し、他者に伝える訓練は、軽視されがちです。例えば、学生時代に、社会人から「業務で必要なことは、文章を書くことと、それを分かりやすく伝えること」とアドバイスされました。しかし、学生時代にはその重要性に気付くことはできなかったのです。 結果として、多くの人が、言語化やアウトプットに苦手意識を持ったまま、社会人になっているのではないでしょうか。
AI時代に求められる、真のスキルとは
AIが台頭する現代において、情報を収集し、分析し、資料を作成する、といった作業は、AIが得意とする分野です。しかし、AIにどのような情報を収集させ、どのように分析させ、どのような資料を作成させるのか、それを考え、指示するのは、私たち人間です。
つまり、AI時代に求められるのは、AIに適切な指示を出すための「言語化力」と「アウトプット力」 なのです。そして、これらのスキルは、一朝一夕に身につくものではありません。 日々の業務の中で、意識的に訓練していく必要があります。
AI活用は「人間力」向上のチャンス
AIを使わない人、使えない人の存在は、私たちに「人間力」の重要性を再認識させてくれます。 そして、AI活用は、その「人間力」を向上させる、またとないチャンスなのです。
AIを使いこなすためには、自分の考えを明確に言語化し、それをAIが理解できる形で表現する必要があります。これは、まさに「人間力」を磨くための、絶好のトレーニングとなるでしょう。