18 生成AI前夜:GAN、VAE、そしてTransformer

18 生成AI前夜:GAN、VAE、そしてTransformer

現代の生成AIブームの直接的な先駆けとなった技術として、GAN(敵対的生成ネットワーク)VAE(変分オートエンコーダ)、そしてTransformer(トランスフォーマー) の3つが挙げられます。これらの技術は、それぞれ異なるアプローチで、生成AIの可能性を大きく広げました。

GAN(敵対的生成ネットワーク):本物らしさの追求

GANは、2014年にIan Goodfellowらによって提案された、生成モデルの一種です。

  • 2つのネットワークの競争: GANは、「Generator(生成器)」と「Discriminator(識別器)」という2つのニューラルネットワークを競わせることで、学習を行います。
    • Generator: 偽のデータを生成し、Discriminatorを騙そうとする。
    • Discriminator: 本物のデータとGeneratorが生成した偽のデータを見分けようとする。
  • 本物らしさの追求: この競争を通じて、Generatorはより本物に近いデータを生成できるように学習していきます。
  • 応用事例: 画像生成、画像変換、スタイル変換など。

GANは、従来の生成モデルに比べて、より鮮明でリアルな画像を生成できることが特徴です。

VAE(変分オートエンコーダ):潜在空間の活用

VAEは、2013年にDiederik P. KingmaとMax Wellingによって提案された、生成モデルの一種です。

  • オートエンコーダ: 入力データを潜在空間に写像(エンコード)し、そこから元のデータを復元(デコード)するニューラルネットワークです。
  • 潜在変数: データを低次元のベクトル(潜在変数)で表現することで、データの特徴を抽出します。
  • 確率的生成: VAEは、潜在変数に確率分布を仮定することで、多様なデータを生成できます。
  • 応用事例: 画像生成、画像補完、異常検知など。

VAEは、データの背後にある潜在的な構造を捉えることで、多様な生成を可能にします。

Transformer:自然言語処理の革新から生成AIへ

Transformerは、2017年にGoogleが発表した、主に自然言語処理に用いられるモデルです。

  • Self-Attention機構: 文中の各単語間の関連性を効率的に捉えることができる仕組みです。
    • 従来モデル(RNN)との違い: RNNは系列データを順番に処理するため、長い系列を扱うのが苦手でしたが、TransformerはSelf-Attention機構により、文中の離れた単語間の関係も捉えることができます。
    • 並列処理の実現: RNNと異なり、並列処理が可能で、学習を高速化できます。
  • BERTとGPT: Transformerをベースとした事前学習モデルである、BERT(双方向)とGPT(順方向)が登場し、様々な自然言語処理タスクで高い性能を示しました。
    • BERT: 文章の分類や固有表現抽出などに優れています。
    • GPT: 文章生成に優れており、近年の生成AIブームの火付け役となりました。
  • 画像への応用: Vision Transformer(ViT)など、自然言語処理だけでなく画像処理でも近年利用され始めています。

生成AIへの道:技術の融合と発展

GAN、VAE、Transformerは、それぞれ異なる強みを持つ技術です。これらの技術が融合し、発展することで、現在の生成AIブームが生まれました。

  • GANの発展: StyleGANなど、より高品質な画像を生成できるモデルが登場しています。
  • VAEの発展: VQ-VAEなど、離散的な潜在変数を扱うモデルが登場し、Transformerとの組み合わせで、画像・テキスト生成で利用され始めています。
  • Transformerの発展: GPTシリーズは、パラメータ数を増やすことで、性能を向上させてきました。

これらの技術は、今後も進化を続け、生成AIの可能性をさらに広げていくでしょう。

次回は、「ChatGPTの衝撃:人間を超える自然言語処理能力」と題して、生成AIの代表例であるChatGPTについて、その仕組みと影響を解説します。