
11 ユビキタス社会の萌芽:いつでもどこでもインターネット
ブロードバンドの普及によって、自宅のパソコンで高速なインターネットを利用できる環境が整いました。しかし、人々はさらなる利便性を求め、いつでもどこでもインターネットに接続できる環境を望むようになります。このニーズに応える形で、モバイルインターネットが急速に進化し、ユビキタス社会の萌芽が見え始めました。
携帯電話とモバイルインターネットの黎明期:iモードの衝撃
日本におけるモバイルインターネットの普及を語る上で欠かせないのが、1999年にNTTドコモが開始したiモードサービスです。
- 携帯電話からインターネットへ: iモードは、携帯電話からウェブサイトの閲覧や電子メールの送受信ができる、画期的なサービスでした。
- 公式コンテンツと勝手サイト: iモードでは、ドコモが審査した公式サイトと、ユーザーが自由に作成できる勝手サイトが提供されました。
- パケット通信料: データ通信量に応じて課金されるパケット料金体系が導入されました。
iモードの登場は、多くの人々にとって初めてのモバイルインターネット体験となり、その後のモバイル文化の礎を築きました。
PHSとAirH”:モバイルデータ通信の先駆け
携帯電話よりも前に、モバイルデータ通信の可能性を提示していたのが、PHS(Personal Handy-phone System) です。
- データ通信カード: PHSにデータ通信カードを接続することで、パソコンからインターネットを利用することができました。
- AirH”: DDIポケット(後のワイモバイル)が提供した定額制データ通信サービス「AirH”」は、当時としては画期的なサービスでした。
PHSは、携帯電話に比べて通信速度が速く、データ通信に適していると評価されていました。
無線LANの登場:Wi-Fiがもたらした自由
無線LAN(Wi-Fi) の登場は、モバイルインターネットの利用シーンをさらに拡大しました。
- 家庭内ネットワーク: 自宅に無線LANルーターを設置することで、家中どこでもワイヤレスでインターネットを利用できる環境が実現しました。
- 公衆無線LAN: 駅や空港、カフェなどに、公衆無線LANスポットが設置され、外出先でもインターネットを利用できるようになりました。
- ホットスポット: 公衆無線LANを備えている場所を「ホットスポット」と呼んだ。
無線LANは、ケーブルから解放された、自由なインターネットアクセスを実現しました。
スマートフォンの登場:モバイルインターネットの本格普及
そして、2007年のiPhone登場、2008年のAndroid登場以降、スマートフォンが急速に普及し、モバイルインターネットは本格的な普及期を迎えます。
- タッチパネルによる直感的な操作: スマートフォンは、従来の携帯電話に比べて、より直感的で使いやすいインターフェースを備えていました。
- アプリの登場: App StoreやGoogle Playを通じて、様々なアプリケーションが提供され、スマートフォンの利便性が飛躍的に向上しました。
- 3G、4G、そして5Gへ: モバイルデータ通信の高速化により、動画視聴など、リッチコンテンツの利用が一般化しました。
スマートフォンは、私たちの生活に欠かせない存在となり、いつでもどこでもインターネットに接続できるユビキタス社会が現実のものとなりました。
ユビキタス社会の光と影
ユビキタス社会は、私たちの生活に大きな利便性をもたらしました。
- 情報へのアクセスの容易化: いつでもどこでも、必要な情報にアクセスできる。
- コミュニケーションの円滑化: SNSなどを通じて、リアルタイムでコミュニケーションできる。
- 新しいサービスの登場: 位置情報を利用したサービスなど、ユビキタス社会ならではのサービスが生まれている。
しかし、同時に、新たな課題も生まれています。
- セキュリティリスク: 常にネットワークに接続されているため、セキュリティリスクが高まる。
- プライバシー問題: 位置情報などの個人情報が、知らないうちに収集・利用される可能性がある。
- デジタルデバイド: モバイルインターネットを利用できる環境や、使いこなせるスキルに格差が生じている。
ユビキタス社会は、まだ発展途上にあります。その利便性を享受しつつ、課題を解決していくことが、私たちに求められています。
次回は、「AIの長い歴史:機械仕掛けからニューラルネットワークまで」と題して、現在注目を集めている生成AIの礎となる、AIの歴史を解説します。