
18[2024年9月]AIが事業計画作成の常識を変える 〜 驚きのスピードと精度、そして経営者の確信
これまでの連載では、私がChatGPT登場前後の試行錯誤から、様々なAIツールを活用する現在に至るまでの経験をお話ししてきました。特に、情報収集や資料作成、そして企画立案といった業務において、AIがいかに強力なパートナーとなり得るのか、その可能性について言及してきました。今回は、中小企業の経営者から事業計画作成の相談を受け、AI活用を提案した際に得られた、驚くべき成果についてお話しします。
相談のきっかけ 〜 経営者の抱える悩み、そしてAI活用の提案
ある日、私は、以前からお付き合いのある中小企業経営者、B社長から、新規事業に関する事業計画の作成について相談を受けました。B社長は、長年培ってきた経験と勘を頼りに、事業を成長させてきた、叩き上げの経営者です。しかし、昨今の目まぐるしく変化するビジネス環境の中で、従来のやり方だけでは限界を感じ、新たな事業の柱となる、新規事業を立ち上げたいと考えていました。
しかし、B社長は、新規事業の立ち上げ経験が少なく、事業計画の作成に苦労されていました。「アイデアはあるんだが、それをどうやって具体的な計画に落とし込めばいいのか…」「市場調査や競合分析も、何から手を付けていいか分からなくて…」と、悩んでおられました。
私はこれまで、AIの可能性を周囲に伝える機会を伺いつつも、なかなか具体的な行動に移せずにいました。 しかし、B社長の悩みを伺ううちに、「今こそ、AIの力を示す時だ」 と感じ、AIを使った事業計画作成を提案しました。
具体的には、ChatGPTを使ったアイデアの壁打ちや、Perplexityを使った市場調査、そしてGensparkを使った事業計画書の作成支援などを提案しました。
しかし、当初、B社長は半信半疑の様子でした。「AIで事業計画を作るなんて、本当に可能なのか?」「自分のビジネスのことを、AIに理解できるのか?」といった、不安を口にされていました。それもそのはず、従来の事業計画作成といえば、膨大な時間と労力をかけて、人間が作成するものだったからです。
ハンズオンセミナー形式で、AIの実力を体感
私は、B社長の不安を解消するために、「まずは一緒に、AIを使って事業計画書の一部を作ってみませんか?」 と提案しました。いわば、ハンズオンセミナー形式で、マンツーマンでAIの活用方法を体験してもらうことにしたのです。
まず、Gensparkを使って、新規事業の市場調査を行いました。B社長から、新規事業の概要やターゲット顧客などの情報を聞き取り、それをGensparkに入力しました。すると、Gensparkは、関連する市場データを、瞬時に収集・分析し、分かりやすいレポート形式で出力したのです。
「えっ、もう市場調査が終わったのか…?」
B社長は、あまりのスピード感に、唖然としていました。これまでは、市場調査といえば、調査会社に依頼したり、自社の社員が何日もかけてインターネットで情報を集めたりするのが常識でした。しかし、Gensparkを使えば、ものの数分で、必要な情報が手に入るのです。
ChatGPTで事業計画書を作成、そして「辛口」評価を依頼
次に、Gensparkによる市場調査の結果を基に、ChatGPTに事業計画書の叩き台を作成させました。事業の概要、市場分析、競合分析、マーケティング戦略、収支計画など、事業計画書に必要な項目を、ChatGPTが次々と文章化していきます。
そして、私は、ChatGPTに、「あなたは投資家です。この事業計画書について、批判的な目で評価してください」 とプロンプトを入力しました。すると、ChatGPTは、まるで経験豊富な投資家のように、事業計画書の穴や、改善点を指摘してきたのです。
例えば、「市場規模の予測が楽観的すぎるのではないか?」「競合との差別化戦略が不明瞭だ」「収支計画の根拠が弱い」といった具合です。
さらに、私は、「では、あなたは経営者です。この投資家からの指摘に対して、どのように回答しますか?」 と、ChatGPTに再度プロンプトを入力しました。すると、ChatGPTは、今度は経営者の視点から、先ほどの指摘に対する回答や、事業計画書の修正案を提示してきたのです。
わずか数分の「衝撃」
これらのやり取りは、わずか数分で完了しました。そして、最終的に生成された事業計画書の叩き台は、B社長の想像をはるかに超える、質の高いものだったのです。
「これはすごい…! まるで、経験豊富なコンサルタントと、投資家と、そして経営者自身が、一堂に会して議論を重ねたみたいだ…!」
B社長は、AIが作成した事業計画書を見て、驚きを隠せない様子でした。そして、「これまでの事業計画作成にかける時間は何だったのか…」 と、苦笑いしていました。
この一件以来、B社長は、積極的にAIを経営に取り入れるようになりました。新規事業の事業計画だけでなく、既存事業の見直しや、マーケティング戦略の立案など、様々な場面でAIを活用されています。
そして、「AIのおかげで、経営判断のスピードと精度が格段に向上した」 と、AI活用の効果を実感されています。
AIは「分かる人」には分かる
この経験を通じて、私は、AIの可能性を理解し、それを活用できるかどうかは、個人のリテラシーや経験に大きく左右されることを痛感しました。
特に、経営者は、限られた時間の中で、多くの意思決定を行う必要があります。 そのため、AIのように、迅速かつ的確に情報を提供し、意思決定を支援してくれるツールは、非常に親和性が高いのです。
「AIは、分かる人には分かる」
私は、この言葉を胸に、今後もAIの可能性を追求し、それを多くの人に伝えていきたいと考えています。
「AIと働く未来への道標」として
このお話が、皆様の働き方のヒントになれば幸いです。
AIが急速に進化する今、私たち人間とAIの関係は、ますます重要なものとなっていくでしょう。AIを恐れるのではなく、AIを理解し、AIと共に働く未来を、一緒に創造していきましょう!そして、この連載が、その未来への、小さな一歩となることを願っています。