20[2024年9月]OpenAI o1登場 〜 さらなる進化を遂げたAI、未知なる領域へ

20[2024年9月]OpenAI o1登場 〜 さらなる進化を遂げたAI、未知なる領域へ

これまでの連載では、私がChatGPTと出会い、PerplexityやGensparkなどのAIツールを活用し、業務改善に取り組んできた道のりをお話ししてきました。そして前回は、AIエバンジェリストとしての決意を新たに、初心者向けのAI解説テキストを作成し始めたことについて語りました。今回は、AIのさらなる進化、特にOpenAIの「o1」の登場がもたらした衝撃について、書きたいと思います。

さらなる進化を遂げたOpenAI o1 〜 期待と不安

私は、エバンジェリストとしての活動を始める一方で、常に最新のAI技術の動向を注視していました。そして、2024年9月、ついにOpenAIから「o1(オーワン)」シリーズが発表されました。

OpenAI o1は、OpenAI社が発表した新しいAIモデルシリーズです。このモデルは、回答を生成する前により多くの時間をかけて思考するよう設計されているという点が、従来のモデルと大きく異なります。

私は、この発表に、大きな期待を抱きました。これまで以上に、人間とAIのコミュニケーションが、自然かつ円滑なものになるだろうと予感しました。しかし、同時に、一抹の不安も感じていました。「果たして、自分は、この進化したAIを使いこなせるのだろうか?」 と。

ハルシネーションとの戦い 〜 従来のAIの課題

o1登場以前、AIの活用において大きな課題となっていたのが、「ハルシネーション」 でした。ハルシネーションとは、AIが事実に基づかない情報を生成してしまう現象です。

このハルシネーションを回避するために、様々な工夫が提唱されていました。例えば、プロンプトに 「ステップバイステップで考えて」 と指示するのも、その一つです。これは、AIに段階的な思考を促すことで、より論理的で正確な回答を導き出すためのテクニックです。

また、「COT(Chain of Thought:思考の連鎖)」 も、有効な対策として注目されていました。これは、AIに回答だけでなく、その回答に至った思考プロセスも出力させることで、ハルシネーションの発生を抑えるというアプローチです。

私も、これらのテクニックを駆使して、ハルシネーションを最小限に抑えながら、AIを活用していました。しかし、これらの対策は、あくまでも「対処療法」であり、ハルシネーションを完全に無くすことは難しいと感じていました。

「考える」AI 〜 o1がもたらした変化

o1のプレビュー版 を試用する機会を得て、まず驚いたのは、その思考時間でした。従来のGPTシリーズでは、どんなに複雑な質問をしても、ほとんど間を置かずに回答を生成していました。それはそれで凄いことなのですが、時々、浅い回答や、的外れな回答が返ってくることもありました。

しかし、o1は違いました。複雑な質問をすると、数秒、時には数十秒、沈黙することがあったのです。 まるで、人間がじっくり考えるように、AIが内部で思考を巡らせているようでした。

そして、しばらくの沈黙の後、o1は、以前のモデルよりもはるかに深く、洞察に満ちた回答を返してきたのです。この、「考える」AIの姿を目の当たりにして、私は、AIが新たなステージに突入したことを確信しました。特に、「ステップバイステップ」や「COT」を明示的に指示しなくても、AI自身が、必要に応じて思考プロセスを組み立て、より正確な回答を導き出しているように見えました。

未知の書類との遭遇 〜 o1の真価

そんなある日、私は、ある書類の分析を依頼されました。それは、これまで見たこともない形式の、専門用語が並ぶ、難解な書類でした。正直なところ、私には、その書類が何を意味するのか、どのように処理すべきか、全く分かりませんでした。

そこで、私は、藁をもすがる思いで、その書類をGoogleのGeminiに読み込み、内容を文字起こしさせた上で、説明させました。 次に、その説明文をo1に読み込ませ、「この書類の論点を整理して」と指示を出しました。

すると、o1は、数十秒間、沈黙しました。そして、私の想像をはるかに超える、驚くべき回答を提示したのです。

驚愕の分析力 〜 人間の思考を超えるAI

o1は、その書類の要点を、分かりやすくまとめるだけでなく、そこに潜むリスクや、論点を、見事に整理してみせたのです。さらに、関連する情報を自ら探し出し、それらを加味した上で、今後の対応策まで提案してきたのです。

その分析の深さと、洞察の鋭さは、人間の専門家をも凌駕するレベルでした。私は、o1の能力に、ただただ圧倒されるばかりでした。

しかも、私が試したo1は、まだ正式リリース前のプレビュー版だったのです。プレビュー版でこの性能ということは、正式版では、一体どれほどの能力を発揮するのか…? 想像するだけで、身震いする思いでした。

人間を凌駕する? 〜 芽生えた「信頼」

この経験を通じて、私は、o1が、単なる情報処理ツールではなく、人間の思考を拡張し、新たな知見をもたらしてくれる、真のパートナーになり得ることを確信しました。そして、「場合によっては、人間よりも信頼できるのではないか」 とさえ、感じ始めていました。

もちろん、AIを盲信するのは危険です。しかし、o1の示す分析結果は、それほどまでに説得力があり、私の従来のAIに対する考え方を、大きく揺さぶるものだったのです。

OpenAI o1の登場、そして「人間とAIの協働」の新たなステージへ

o1の登場は、AIの歴史における、新たなマイルストーンとなるでしょう。AIは、より人間に近い形で思考し、判断し、創造する存在へと進化しつつあります。

そして、その進化は、私たちの働き方を、そして社会のあり方を、根本から変える可能性を秘めています。私は、この変化の最前線に立ち、人間とAIが協働する未来を、創造していきたいと考えています。